declare war






こんなふうにアンタを思うようになったのは

いつからだったかな


少なくとも俺は
前よりもずっとアンタを‥‥








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ある昼下がり
いつものように社会科準備室であの人を待つ



「遅いなあ‥‥センセー」



ここに通うようになったのは進級して生徒会長になってからのこと。

気まぐれで生徒会長に立候補してなんとなく当選してしまい、まあ仕方ないかとそれなりに会長としての仕事をこなしていた。


そんなある日

その日は仕事をする気になれず、生徒会室の窓から外をボーッと見ていると、ふいに隣りの棟の廊下を歩いている銀色が目に入った。

遠くに見える男は、さして目立つというわけでもないのに、なぜかあの銀色が離れなかった。


それが最初



それから何度か生徒会室からあの人の姿を見た。
その度に銀色が強くなってる気がして、気になって‥‥



「‥‥ねえ、あの人って誰?」

「ああ、日本史の銀朱だよ。‥‥‥っていうか知らなかったわけ?」



自分は他人にあまり興味を持っていないことはわかっていたのに。



「‥‥銀朱センセイ、ね」



もっとアンタを知りたい

そんな感情が生まれたのは初めてと言ってもいいくらいで、正直自分の気持ちに戸惑うこともあった。
‥‥けどそんなことよりも



「考えるよりもまず行動‥‥‥ってね」



アンタのことを知りたくてたまらない
俺は、生徒会室を飛び出した。




それから数ヵ月たった今。
俺に少しずつ変化があった。


ひとつはアンタのいるこの社会科準備室に毎日通うようになったこと。

ふたつめは生徒会の仕事を前よりサボるようになったこと。(そうすればセンセ、俺に構ってくれるし)

そしてみっつめは‥‥感情の変化。


興味から好意へ



前は遠くから見てただけから気付かなかったけど、アンタのところに通うようになって‥‥アンタの傍にいるようになって俺はアンタに惚れたんだと思う。

遠くで見るより綺麗で思わず触りたくなるような銀色の髪

まっすぐ前を見ていて、全てを吸い込んでしまいそうな瞳

仏頂面の中に時々表れる笑顔



何もかもが今は愛しい


でもさ、アンタは気付いてないだろうけど結構人気があるんだよ?
熱心に指導して、真摯な態度で接してくれる生徒思いな先生だって

だから時々アンタを見ると、無性に湧き上がってくる感情がある



生まれて始めて感じた独占欲




いっそ誰からも触れられることのない処へ連れて行ってしまおうか



「‥‥‥なぁんて、そんなことしたら一生口聞いてくんなそう」

「何がだ?」



声のした方には、授業で使ったであろう資料を持った教師の姿



「あ、おかえり〜センセ」

「‥‥そこは俺の席だと毎回言ってるだろうが。どかんか」

「はいはい。」



持っていた荷物を置くと教師‥‥銀朱は大きなため息をついて椅子に腰を下ろす。



「全く、毎日毎日飽きもせず‥‥。ここに来る暇があるなら勉強しろ」

「あら。俺、こう見えるだけあって成績いいんだけど」



何せ生徒会長ですから。とにっこり笑ってみせると、銀朱はまたひとつため息をつく。



「馬鹿者、そのくらい知っている。そうじゃなくて、現状で満足をせずにもっとだな‥‥」

「はーいはいワカリマシタ。もお、いつも思うけど、センセーはカタいよ?それに話長いし。だから、生徒に若年寄りなんて言われちゃうんだよ」

「う、うううるさい!貴様にそんなこと言われる筋合いはないわ!!」



銀朱は眉間に皺の寄せて、その顔を真っ赤にして怒っている。

それだけなのに


ああ、かわいいなァ


そう思ってしまうのは、やっぱり相当この教師にハマり込んでる証拠だよね



「でも、俺はそんな銀朱センセーが好きだよ」

「‥‥は?」




俺は、やっぱりこの気持ちを隠したままなんてムリ。



「これからはガンガン攻めていくから、覚悟してね。」








絶対アンタを俺に向けさせてやるよ。




これは、アンタへの宣戦布告



















その後


「じゃ、また後で来るから。今日は一緒に帰ろうねーセンセ」



パタン


そう言って、桃色は部屋を後にする。
そこに残された日本史教師は‥‥‥


「‥‥‥なっ‥‥な‥‥‥‥〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!!??」







さっきまで真っ赤にしていた顔を別の意味で一層赤く染めていた‥‥




そのことを知るのはもう少し先のこと