花散る
おまえは俺を少しでも気にかけてくれていたのだろうか
俺はおまえの中にいたのだろうか
そしたら、俺は
こんなこと考えても今更か‥‥
思わず自嘲じみた笑いが出てしまった。
明日は俺の結婚式だというのに
正装を身にまとい、隣には可愛らしい女性が立つ。
俺はこれからその人と共に生きていく。
自分で選んだ道だから後悔なんかしていない。
それなのに
どうしてこんな気持ちになるのだろう
きっとあいつのせいなんだろうな‥‥
自分勝手でいつもヘラヘラしてふざけて俺の邪魔ばっかりする男を
俺は
いつのまにか好きになっていたんだ。
あいつは他人と本気で接しようとはしない。
いつもどこかで距離を置いていて、もちろんそれは俺にとっても変わらなかったけれど‥‥でも、側にいてくれた。
俺はそんなおまえに怒ってばっかりだったけど
それでもおまえは側にいて笑ってて、それだけなのに胸のあたりが暖かくなって
素直になれなかったけど‥‥本当は嬉しかった
こんな時間が永遠に続くといいなんてガラにもないことを考えてしまうくらい
本当に
本当に幸せで‥‥
大好きだったんだ
あいつはそんなふうに思われてたなんて、夢にも思っていないだろう
このことをあいつに言うつもりはない。
こんなこと言われても困るし、拒絶されるに決まってる。
それに救世主の血を絶やしてはいけない
だから
俺は一生この気持ちを隠してみせるから
だからどうか
ガチャッ
「タイチョー」
「‥‥‥なんの用だ」
もう少しこのままで‥‥‥
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