輪廻の糸-序章-
たとえ何百年もの時を越えても
約束は
絆は
どこまでも
繋がっていると思うから
それはまるで見えない糸のように
-------------------------------------------------------------
「元、就‥‥‥」
地面に横たわる男が血で紅く染まる手で頬に触れてくる。
自分はそれに応えるように手を重ねていて
「‥‥ばかもの、貴様は我を置いて行く気か」
ばかもの、ばかものと何度も呟いている自分にごめんな、と男は苦しそうに顔をしかめながら囁く
「いや、だ。いくな‥我を‥‥‥置いて逝くな」
ポロポロと零す自分の涙を拭い、見ながら、男は
微笑った
「約束、だ‥‥次、生まれ変わったら、必ず、お前をみつけて、やる‥‥‥‥それ、から――――」
(‥‥‥またこの夢か)
涙でぐしゃぐしゃになっている顔を拭う。
‥‥最近よく見る夢。
男が血だらけで横たわっていて、それを死ぬな、と必死で叫ぶ自分
あんな男は見たことも会ったこともないのに、何故か最後に自分にむけたあの愛しくてしかたないような顔が、キラキラと輝く銀色が離れなかった。
夢を思い出すだけで
また涙が出た。
「‥‥どうしたというのだ、我は」
あなたはだれ
なぜこんなにも
あいたいの
(‥‥‥学校に行かねば)
胸の切ない疼きを抑えて仕度を始める。
今日から高校2年の新学期
この胸騒ぎはなにかが起こる予兆なのだろうか
言い様のない気持ちを抱えながらも、元就は学校へと向かった
← →