お部屋で夏魚とだらんと過ごしていたとある休日



「そういえば来週って、東宮先輩の誕生日じゃなかったか……?」

「…は………」






 ぷれぜんと いず みー






そんな衝撃的な事実を知ってから一週間。そりゃあ死に物狂いでプレゼント探しましたとも!
自他共(?)に認めるイベント好きとしては恋人の誕生日をリサーチし忘れるなんて一生の不覚だったぜ……夏魚に感謝!

俺的にはリボンとかグルグルに巻き付けて『プレゼントは、お・れ☆』とか言ってプレゼントしてあげようかと思ったんだけども、夏魚さんに激しく反対された ので我慢しました。

あーあ、つまんないの

で、結局用意したモノはマフラーですよ。
最近寒くなってきたし、砂波ちゃんたら、もう11月なのに薄着だからさー
ちょっと長めの買ったから2人で使って相合マフラー!なんちて。

きゃー総、はずかすぃー



「……妄想中申し訳ないが」

「へぁ?」



そうだった。俺、まだ夏魚といるんだった。



「渡しに行かなくていいのか?」

そういわれて、は、と時間を見ると
わーぉもうこんな時間



「やばっ、では砂波ちゃんのとこ行ってくるぜよ!」

「……いってらっしゃい」



背後でひらひらと手を振るのを尻目にプレゼントを抱えて部屋を飛び出した。





_________________________







いつも砂波と猫のアキミノリさんがいる屋上の扉の前。
さっき部屋に行ったけど、いなかった。てことは、ここならいるかも。

きい、と小さい音を立てて扉を開けた。



「さなみちゃ……」

「……受け取って下さい!」





そこには、
えーと、砂波ちゃんと……………男の子?
1年生かなー。かわいいなー。ちっこくて、ころころして、守ってあげたいと思うような。
まさにBL的鉄板の守ってあげたい子犬わんこ系受け!
そんで、そういう子には『心配するな……俺がずっと守ってやる。これからもずっと。』『攻め………!!』とかいう定番の幼なじみで長身美形、騎士系受け溺愛攻めがくっつくパターン!
そうそう例えば砂波みたいな、……


攻め、が






「ずっと……東宮先輩のことが好きでっ!」

「……」

「東宮先輩には、冬里先輩がいるのはわかってるんですけどっ……」








「今日、誕生日ですよね。だから……プレゼント…よかったら、使ってくれたらなーって」





マフラーが






ちく、り



「……………………っ」



思わずにげた





遠くから砂波の声が聞こえる。
なにをいっているのか、わからないけど


恐くなった。

さっきの子と、砂波があまりにも似合いすぎてて。
自分がここにいるのがなんと滑稽なのだろうかと

砂波の誕生日すら知らなくて、ぎりぎりで用意した俺のものが
なんてちっぽけなものなのだろうかと

恥ずかしくなった。




砂波の返事が聞きたくない

自信がない




身体が勝手に動く
その場から離れろ、と









なんか


痛い









胸が



いたい







バタンッ




「うあっ!?びっくりしたー。……総?」

「…………只今帰りました」

「……おかえり、早かったな。あれ、東宮先輩に会わなかったのか?」



ちくん



「………」

「総?」

「……あはは。申し訳ないが、胸焼けのため、今日はお休み、させていただきま、す。ではっ!」

「お、おい…!」





















ということで、自室に引きこもり中です。
総君は今ものすごく落ち込んでおります。

夏魚には悪いことしちゃったなー。あとで力いっぱい遊んであげよう。



「あー……これ、どうしよう」



存在を忘れ去られていたプレゼント



砂波は、受け取ったのかな。
恋人だから、とか自惚れてる訳じゃないけどさー


もらってほしくない、な


そんなこと思ってしまったよごめんねプリティーボーイ
やきもちやきな総くんは取り扱いがむずかしいね。



かさり、プレゼントをなでる

もし受け取ってたらわたせないなー、これ


少し前の光景を思い出して、胸が絞まる
思わず手の中にあるモノを放ってしまった。





俺にとってのBL的王道は『切な甘』が鉄則なのだけれども。
こんな定番シチュエーション自分自身で体験するとはなー。
今なら受けの気持ちが分かるぜお姉様。

……でも本当にハッピーエンドになるのかな

俺たち、は



こんこん



「入るぞー」

「ほぁいー夏魚?どうぞー」



ガチャ、と扉が開いた音を確認して



「さっきはごめんなー後でお詫びにBL本たんま…り……。」



扉の向こうには夏魚と



「砂波…ちゃん」



……なんで、いらっしゃる?



「…おまえ、思考が口からタダ漏れしてるぞ。とりあえず、呼んできたから、2人でゆっくり話し合え」



パタン



まぁなんて俺のことがよくわかっていらっしゃる素敵なフレンズなのかしら。ホント大好きだ
いやはや、しかしですな



「……」

「……」



……めっちゃ気まずいんですけど。
浮気して詰め寄られてる亭主の気分だ。いや、してないし、亭主でもないけども。



「えー、と……さ、砂波さん…?」

「……古宮から聞いた。来てくれたんだろう?プレゼント、渡しに」



ぴくり



「……」



じ、と砂波は俺を見つめ、無造作に放ってある『もの』に目線を送る。
あの子が同じ物を渡しているのに。
あんなに愛情がこもってるものをもらってるのに

どうしよう、顔が見れない


わたせない、よ



「…悪いけど、渡せ、ない」

「……どうしてだ?」



やばい、なんか声が
震える



「さっき、プレゼントもらってた、だろ?」



おちつけ



「実はさっきの子と同じで、マフラー用意しちゃっててさー、また今度別の渡すから」



大丈夫




「今日は、かんべん、し……っ」



ふわりといいにおいに包まれる。
あれ、俺抱きしめられて、る…?



「さ、さなみちゃ……?」

「俺は、好きな奴からしか欲しくない」



俺を抱く腕の力がだんだん強くなってく。



「総からしか、いらない。」




すこし、悲しそうなこえ



ごめんね
ごめんね。砂波



「うん……ごめん、ね」

「……じゃあ、ちょうだい、それ」



床に転がっていたプレゼントを開けて、中から出てきたマフラーを砂波ちゃんの首へ



「お誕生日おめでとう。砂波ちゃん!」

「……ありがとう。総」



砂波のおだやかな笑顔に







なんだか、なきそうになった











BL的王道の『切な甘』。
その"王道"を俺たちも、ちゃんと走ってるのをみると、この先は……リボンを巻きつけて





「砂波ちゃん、せっかくなので俺ももらってくれませんかー!」



「喜んで」









大好きなひとに 贈り物を













基さんの『割とよくある男子校BL的展開実況論文』よりネタをいただきました。

こちらからも行けます。
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